「プチエンジェル事件」の封印された真相

「助けて、助けて。 警察呼んで下さい」
靴も靴下もはいていない少女が突然 花屋に駆け込んできた。
「友だちが残っているの。 助けて」 ひどく女びえた様子の少女の両手首 には赤いアザがあった。

2012年7月17日 少女専門デートク ラブの存在が明るみに出た「プチエンジ ェル事件」は赤坂のウィークリーマン ションの一室に監禁されていた少女が、 部屋から逃げ出し、花屋に駆け込んだ ことから発覚。 花屋の店員が警察に通報 し、警察がマンションに踏み込んだ。

時にはすでに犯人と目された吉里弘太郎(当時)は練炭自殺を遂げていた。 事 件は多くの疑問、矛盾、謎を残したま ま、幕が引かれた。

週刊誌記事

「プチエンジェルは潰されたと聞いたが......」

事件を新聞報道を元に改めて整理してみる。

マンションの一室に監禁されていた 小学生4人の親からの捜索願を多摩中央警察署が受けたのが、4人の行方が分からなくなって半日たった7月13日の夜。 捜索願を受け、同署は聞き込みを開始する。 一方少年育成課は、渋谷や新宿 で女子高生数人を使って少女を対 象にアルバイトの勧誘を行なって いた人物として、吉里の存在を把 握していた

少女の自宅から「プチエンジェル」と 記されたチラシが見つかり、チラシに 記されていた携帯電話の番号が吉里の ものであったことから、別件で逮捕状 を取り、7月16日に捜査一課を中心に 行方を追い始めた。だが、吉里の居場 所の特定は難航し、警視庁は16日夜、 少女4人の顔写真が入ったビラを準備、 公開捜査に踏み切る直前だった。



そして、翌17日午後、一人の少女が 花屋に駆け込んだことで、事件が発覚。 警察の動き、事件の発覚、そして容疑者の自殺 この不自然な事件の流れは、はたして偶然なのだろうか。

吉里の不自然な死も司法解剖がされ ないまま、警察は早々に「自殺」と断定。 遺書はなかった。 古里とともに行動し、 少女らをタクシーで部屋まで連れてき した渋谷で前日、少女らに声を かけていた。女子高生風の女について も、警察は「関係性なし。吉里の計画的 単独の犯行と断定し、事件の幕引きをはかった。

一連の流れを俯瞰した時、筆者の頭 を過ぎったのは、全てが何者かが書い た。シナリオ通りに事が進んだのでは ないかという疑念だった。

赤坂の元組織関係者氏は証言する。 「エンジェルは潰されたと聞いたがな…エンジェル自体も問題だが、それ より後ろの関係がな…。

また元警察関係者も事件の一連の流れに疑問を呈した。
「もし本当に報道通りだとしたら、あ り得ないね。期限まで引張って裏をきっちり取るはずだ」

仕組まれた｡少女たちの 白昼の逃走劇…?

事件の謎はまだある。例えば、新聞 には次のような記述がある。

吉里容疑者

4日目の16日夜、吉里容疑者は食事部屋に入ったきり出てこなくなった。まったく物音も聞きえず、人の気配がなくなった。「社長がいなくなったのでは」1日正午すぎ、脱衣所に た人が手錠から手を抜いて部屋を脱出マンション隣のビルにある花屋に駆け込んだ。

警察が部屋に踏み込み､ ダイニング でビニール製シートの中で仰向けに倒れ死んでいる吉里を発見したのが、 1 日正午~午後1時の間辺りと推測され る。 死因は「一酸化炭素中毒とみられ、 死後十数時間たっている」との報道が あることから、16日夜から17日未明に かけて吉里は死んだことになる。自殺 にしろ、他設にしろ、報道にある通り 吉里の行動が物音で判断できる」部屋 であるならば、少女たちは「部屋で何が 「起こったか」を知っているはずだが…。

だとすると公開捜査が始まる直 前のタイミングで少女が花屋に駆け込 んだ白昼の逃走劇も、吉里の練炭自 も全て仕組まれていたのだろうか…。

「いわゆる半グレだけど、 結構やり手の部類に入るだろうな」

吉黒は大学卒業後、 裏ビデオ販売な どで口を凌いでいたというが、 父親は元朝日新聞の記者で事件の数年前に 自慢している｡また兄も父親の後を追 うように自殺しており、「吉里＝自殺家系」の報道は吉里の練炭自殺の疑惑を打ち消す有力な役割をはたしたといえる。 また報道では、吉里は高級ホテ ルに宿泊し、フェラーリを乗り回し(事件発覚の一週間ほど前に売却)、頻繁にハイ ヤーに乗る姿が目撃されている。 こう した派手な一面がある一方で、本来の 自宅である埼玉のアパートも解約せず、 軽自動車も所有していた。だが、最大の謎は吉里名義の通帳に残されてい たとされる「5億円」という巨額の金の 正体である。

非合法ビジネスに詳しいB氏は吉里 の人物像をこう語る。

「いわゆる半グレ(暴力団と素人の中間)だけど、結構やり手の部類に入るだろうな。」

では、「億円」の金は、吉里が組織 運営によって得た巨万の富ということなのか？

「名義は自分でも本人の通帳とは限らんよ! こういう人間は上に言われれば 自分名義の通帳も証券口座も作る。別 に珍しい話じゃない。 例えば組織の金 仲間内で土地・ゴルフ場・法人売買や 仕手、金融などをしていればこのぐらいの金は普通だ」

事件当時の2003年 東京はITバブルに沸いていた。あのライブドアが社 名「エッジ」から変更し、本格的な法人買収を開始したのも、この年の11月である。



当時、上場ブームで闇社会が金を出したITモドキなどが莫大な金を得たからな。そうすると、今度はダミーの 人間を使って投資をする。 通帳の5億 という金も吉里自身もそういう類だろ う。当時はこんな奴が多かったよ。こ いつらは主に不動産業 風俗業を商いにするかに分かれるんだ。 まあ、 ●通信も元は風俗だしな(笑)。いずれにして 闇社会の人間と金が存在するし、そこに関係する政治家、警察も存在する。

抹殺された「顧客リスト」の 本当の中身

一説に警察は「2名」にものぼる数 財界の大物が名を連ねる顧客リストを 押収したと言われる。だが、このリス トは本当に実在したのか?

前出のA氏はこう語る。
「リスト自体はあったらしいが… 確なものではない。人数にしても数百人もいないだろう」

このリストを世間に公表したら、大変なことになる これを危惧した 「リストを封印し、事件の早期幕引 きをはかったとの見方もある。

事件のあった赤坂のウィークリーマンション

「リストが正確なものではない｡というのは事実でしょう。仮に議員が利用 のもありません。実際には秘書を辞め「 するとしても、直接連絡を取ることは たブローカーや裏社会に関与する仲介 者が連絡を取るのが普通です。仲介者 が伝えるのも議員名ではなく、○○N みたいな適当教会風の名前だと思 いますよ。 だいいち、実際に利用する が議員本人なのか秘書や後援会の人間かなんて受ける側はわからない。こうした非合法な取引ではお互い全てを 聞かないのがルールです」(元大臣秘)

政治家などの顧客が多いという都内 のVIP専門の風俗店経営者はこう証言する。
大抵は議員と繋がりのある関係者か ら連絡が来て、どこそこのホテルに何時に　みたいな感じかな。リスト? 一 応あるけど、これで割り出すのは無理じゃないかな？　名簿に議員の個人名は入れないなあ…でも自分から、議員 だって女の子に言う人も結構多いし (笑)。間に入っている人間からも何となく、でも時間や場所なんか大体わかるよ。

つまり、プチエンジェル事件で囁か れたリストの存在は前出の証言にある ような性格のものだったのだろう。だ が、このリストと吉里が持っていた情 報があれば 顧客だった政治家にた どり着くことは可能であり、それは同 時にリストを手にした者にとって、有 効な”恫喝のツール”になることを意味する。

前出のA氏がプチエンジェルが「潰された」と言った理由、そして吉里が不審死を遂げた理由がここにある。

見取り図

誰が吉里を殺したのか......?

プチエンジェルの顧客だったとされる 政財界の大物とは誰だったのか? 1 部では大物財界人「Ì」や小泉政権時に 「抵抗勢力」と呼ばれた議員の存在も噂 された。 そして、プチエンジェル事件 の真相とは何なのか?

A氏は筆者に一つのヒントを与えてくれた。

「一つは当時の闇社会の東西戦争。 してもう一つは政治家の勢力争い。事 件と同じ時期に起きた永田町での出来 事でも調べな。西と東の守神たちが喧嘩してるから」



闇社会の東西戦争 永田町の出来事　 A氏の言葉で筆者にはピンと来 た。 政治家と闇社会の関係。 政治家と ある組織の勢力を､そしてこれに対抗する政治家とある組織の勢力を しょう。 そして、 プチエンジェルと吉里の勢力図のなかに存在する組織 だったとする。 AはBによってプチエンジェルを潰され、 リストを抑えられ、 結果、 Aの勢力は失墜、以降Bが台頭 した これがプチエンジェル事件の 真相であり、勢力争いの大雑把な構図 だ｡そして、この事件以降、激変した 闇社会と政界の勢力図は、まさに驚くほどA氏の証言と一致していた…

誰が吉里を殺したのか それは前 述の勢力図で言えば､ プチエンジェル側の勢力Aということになる。

なぜ、吉里が殺されたのかそれ は、吉里が組織の重要な秘密を握る 弾だったからだ。吉里の身柄を対抗す る組織や警察が押えれば、吉里が口を 割ることは確実だった。組織にとって 被害の拡大を防ぐための選択肢 れは吉里を殺すことだった。 練炭自殺 が後にある有名人の怪死の際にも用 いられた手法であったことは偶然ではない。



政界と社会の権力争いは表裏一体で ある。そして、 プチエンジェル事件の 真相が封印された理由 それは、この魑魅魍魎の縮図が事件そのものだっ たからである。